2026/09/02

テクノロジー

【26卒】国際会議体験記(SIGIR2026・ICTIR2026)

この記事の目次

    はじめに

    デジタルテクノロジー戦略本部 AI戦略室のT.Sです。
    2026年7月、オーストラリア・メルボルンで開催されたSIGIR 2026(49th International ACM SIGIR Conference on Research and Development in Information Retrieval)とICTIR 2026(ACM Conference on Innovative Concepts and Theories in Information Retrieval)に参加してきました。学生時代に取り組んでいた研究の成果をICTIRで発表するとともに、SIGIRでは世界中の研究者や企業が発表する最新の研究に触れることができました。
    今回の記事では、現地の雰囲気や印象に残った研究、そして実際に参加して感じたことを紹介します。

    SIGIRとは?

    SIGIRは、情報検索(Information Retrieval: IR)分野を代表する国際会議の一つです。
    検索エンジンやレコメンドシステム、RAG、LLMを用いた検索技術など、私たちが日常的に利用している情報サービスを支える最先端の研究成果が発表されます。
    2026年はオーストラリア・メルボルンで開催され、会場には世界各国から多くの参加者が集まりました。会場には大学の研究者だけではなく、企業研究者も数多く参加しており、アカデミアと産業界が密接につながっていることを実感しました。


    印象に残った発表

    今回聴講した発表の中で、特に印象に残ったのがLinkedInによる
    Policy-Grounded Dynamic Facet Suggestions for Job Search
    という発表です。

    求人検索では、「Data Scientist」や「Software Engineer」のような短い検索クエリが多く、検索キーワードだけからユーザーの本当の意図を理解することは簡単ではありません。

    例えば、「AIエンジニア」という検索でも、

    • 新卒なのか
    • 経験者なのか
    • 勤務地はどこなのか
    • どの技術領域を求めているのか

    によって、ユーザーが求める求人は大きく異なります。

    この発表では、検索ランキングモデルを改善するだけではなく、ユーザー自身が検索意図を具体化できる仕組みを導入していました。具体的には、検索窓の下にユーザーの特徴や入力した検索クエリに応じた動的なファセット(検索条件候補)を表示します。ユーザーが提示された条件を選択すると、その情報が検索条件へ追加され、より明確な検索意図で求人を探せるようになります。

    私が特に興味深いと感じた点は、「検索システムがユーザーの意図を一方的に推測する」のではなく、「ユーザーとのインタラクションを通じて検索意図を明確化する」という考え方です。検索技術というとランキングモデルや検索アルゴリズムに注目しがちですが、良い検索体験を実現するためには、ユーザーがどのように情報を探すのかまで含めて設計することが重要だと感じました。求人サービスにおいては、ユーザーと企業のより良いマッチングを実現することが重要です。その観点でも、このような検索意図を引き出す仕組みは非常に参考になる取り組みだと感じました。

    ICTIRでポスター発表

    SIGIR開催後には、併催国際会議であるICTIRにも参加しました。私は、学生時代に取り組んだモデルマージを情報検索分野に応用する研究について、ポスター発表を行いました。

    本研究では、各ドメイン向けに個別に学習したDense Retrieverをモデルマージによって統合することで、複数ドメインに対応可能な単一のDense Retrieverを構築できるか検証しました。

    発表では、

    • モデルマージの有効性
    • Mixture of Expertsとの違い
    • ドメイン数を増やした場合の性能変化

    などについて議論を行いました。
    自分の研究内容を英語で説明し、質問やコメントをいただきながら議論できたことはとても良い経験になりました。

    メルボルンの街並み

    学会期間中にはメルボルン市内も少し散策しました。
    街中には歴史ある建築物と近代的な高層ビルが共存しており、とても魅力的な都市でした。

    参加して感じたこと

    今回で海外での研究発表は2回目でした。日本生まれ日本育ちの私にとって、英語で自分の研究内容を伝え、海外の研究者と議論することは決して簡単なことではありませんでした。それでも、自分の研究についてさまざまな視点から意見をいただいたり、世界中の研究者による最新の研究成果を直接聞いたりできたことは、非常に貴重な経験となりました。

    またSIGIRでは、検索とLLMの融合がさらに加速していることを強く感じました。今回は、Deep Researchに関連する研究をはじめ、検索技術にAgentやReasoningを取り入れた研究が数多く発表されていました。情報検索の分野も新たな技術が登場するたびに形を変えていることを実感しました。

    おわりに

    SIGIR・ICTIRへの参加は学生時代に取り組んだ研究の発表が主な目的でしたが、企業に勤めるデータサイエンティストとしても大きな学びになりました。世界中の研究者が取り組む課題や最新技術を直接知ることで、自分自身の視野が大きく広がったと感じています。今回得た知見を今後の業務に活かしながら、引き続き検索・推薦・生成AI分野の技術をキャッチアップしていきたいと思います。

    最後までお読みいただき、ありがとうございました。

    ※本記事は2026年09月時点の情報です。

    著者:マイナビエンジニアブログ編集部