テクノロジー
Google Cloud Next Tokyo’23 参加レポ
はじめに
2023年11月15・16日、4年ぶりにGoogle Cloud Next Tokyo'23が東京ビッグサイトで開催されました。
当記事では筆者が参加した15日の内容についてレポートします。
イベント内容
Google Cloudを導入している企業のリーダーがビジョンや取り組みについて話をする基調講演、9つのジャンルに分かれた各企業の取り組みやクラウド活用事例が聞けるブレイクアウトセッション、Google Cloudの操作を学べるハンズオンセッション、各企業のブースで最新のサービスや事例を知ることができるExpo、Google Cloudのデモも体験できるエンジニアのためのInnovators Hiveなど様々なプログラムが用意されていました。
ブレイクアウトセッション
今回参加したブレイクアウトセッションのうち2つをピックアップします。
11冠エンジニアを輩出した組織とは?チーム立ち上げのための6つのキーポイント
講演者
株式会社G-gen 執行役員 CTO 杉村 勇馬 氏
講演概要
株式会社G-genは、Google Cloudインテグレーターで、2021年9月はエンジニアの数は杉村さん1名でしたが、2023年11月現在は23名にまで増えている状況。
スタートアップの企業でなおかつGoogle Cloudという先端技術に触れているということもあり、採用基準ではカルチャーマッチを1番に意識しています。
例)
- 攻めていくようなスタートアップの気持ちがあるか
- 教育制度を一緒に作ってもらえるか
また、採用時点では23名中14名がクラウド経験者であり、そのうちGoogle Cloudを知っている方は5名でした。したがって、入社後に徐々にGoogle Cloudのプロフェッショナルへ成長していく流れとなっています。現在では11資格のコンプリート者が8名いる状況。プロ資格を持っている方は21名、パートナートップエンジニアとして選出されたのは9名です。
6つのキーポイント
今回の講演のテーマでもあったチーム立ち上げのための6つのポイントは下記になります。
①分かりやすい行動指針を示す
行動指針などはいくつ作っても覚えられないことは実践できないため、
G-genの行動指針は本来は12個ありますが、
- オーナーシップ
- スピード
- 成果
- 顧客視点
の4つを技術部門の行動指針にしています。(サーバーワークスの4つの行動指針)
②全ての業務を成長の場にする
スタートアップだからこそエンジニア1人でもいろいろな業務領域があり、クラウドインテグレーション、プロジェクト構築、技術サポート窓口も同じエンジニアが担当しています。
このようなことを部署横断で実施することで、いろいろなエンジニアが複数の業務をできるようにしており、技術マーケティングもすべてのエンジニアにある程度行ってもらっています。(例:テックブログ執筆やウェビナーの登壇など)
Google Cloudの正しい知識を身につけることになり、正確かつ論理的な文章を書き、体系的なドキュメントを校正することにもなります。これは、お客様とのプロジェクトにおいて、設計ドキュメントをどのように体系的かつ分かりやすく書くかに繋がっていきます。
③学習を奨励する文化を作る ★一番重要★
スピードと受注率には相関性があると思っています。
計算式でいくらか出すことはできないが、売上利益の向上に確実には繋がると考えています。
【G-genが行っていること】
- 資格試験の受験代金全額補助
- 勉強会の奨励(業務時間中OK)
- 知識のシェアの奨励 (★特に重要)
- Slackで技術的な質問をすると、誰かが率先してすぐに答えるような仕組みをつくっています。技術マネージャーが率先して実施していかないとこの流れはできません。
④資格を正義にしない
【資格は持っているが仕事はできない人に決してなってほしくない】
レベル0-100で段階を分けたとすると…
100⇒①要件定義・設計に活かせるレベル
75⇒②技術者として深く説明できるレベル
50⇒③嚙み砕いて理解(腹落ち)したレベル 《資格合格はこのレベルにすぎない》
25⇒④概要を把握したレベル
0⇒⑤名前しか知らないレベル
⑤会社の中に閉じない
エンジニアは閉じこもりがちだと考えています。
そのため、お客様と積極的に技術交流や懇親会などを行うことを奨励しています。
これにより、以下のメリットが得られると考えています。
- 技術的な知見がプラスになる
- 新しいビジネスに繋がる可能性
- 外の世界が見えて見識が広がる
『世界が広がると技術力の幅も広がる』と考え、少しでもお客様と接点を持つことを励行しています。
⑥コミュニティに貢献する
【コミュニティには参加せよ】
エンジニアには、コミュニティに参加することを奨励し、業務時間中の活動も許容しています。
前述と同様にメリットとしては以下のようなものがあると考えています。
- 技術的な知見がプラスになる
- 新しいビジネスに繋がる可能性
- 外の世界が見えて見識が広がる
感想
G-genがこの短期間で社員を増やしつつ、それぞれのスキルを高められているのはこういった仕組みがつくられているからなのだと知ることができました。
『世界が広がると技術力の幅が広がる』はまさにそうだなと思いましたし、
知識やスキルを得るためにインプットアウトプットする機会をもつ必要性を改めて感じました。
そのためにも会社という狭い世界の中だけでなく、外に出て新たな発見が得られるような風土をつくらなければいけないと思いました。
グローバルNo.1サービスを目指すmeviyに、なぜカルチャー推進が重要なのか?~社員の自己肯定感を高める#IAmRemarkable
エンジニアに限らず、Google発信のワークショップを紹介するセッションもありました。
講演者
株式会社ミスミID企業体IDマーケティング推進室 ジェネラルマネジャー 大川 英恵 氏
Google Cloudパートナー事業本部Partner Development Manager,Data Analytics 小澤 真由子氏
講演概要
事業拡大に伴って、海外チームが加わり、コミュニケーションカルチャー等に課題が出てきた株式会社ミスミ。「困った」「わからない」「仲間が欲しい」に対してすぐに繋がれるコミュニティーを作ることを目的とし、公募で社内プロジェクトを募ってチームを結成。この課題を解決すべく実施したのが、Googleが提供する「IAmRemarkable」という取り組みです。
この取り組みは、ワークショップという形で提供されていて、もともとは女性やマイノリティの方々が自分の意見をしっかり言えるようになるための、という目的で始まりましたが、次第にマイノリティだけではなくどんな人にもこのワークショップが必要であると認識され始めるように。職場などのあらゆる場所で自分の実績をオープンに語ることを目指しています。
業務と関係ない取り組みに参加して良いのか、というメンバーのためらいや、ポジティブに集まったメンバーでもなるべく負荷をかけずに実施するにはどうしたら良いか等運営方法へ課題もありましたが、多様性とマイノリティグループを後押しし、モチベーションと自己肯定感の改善、チームの結束強化が狙えるこの取り組みで、同社はただ心理的安全性を実施するのではなく、なぜ必要なのかを事業部全体で理解することが出来、イノベーションを起こすカルチャーづくりを推進することが出来ました。
感想
カルチャーづくりを考えた際に、仕組みを整える、担当を決める…等ではなく、「困ったときにすぐ繋がれるコミュニティを作る」はなかなか出てこない、出てきても実現に意外とハードルが高い箇所なのではと思っており、実現されている力強さと、その意欲に対してアンサーが出来る取り組みとの両方に感銘を受けました。
組織活性、連携強化を目標に掲げる組織は多いかと思いますが、「そもそもなぜやるのか?」の部分についてもしっかりとフォーカスする、かつ”組織の全員が”その理由と重要性を理解する、というところまで落とし込めているかというと、出来ていない組織の方が多いのではないかと思います。本質の目線が合っていないと、どうしても必要な時に協力し合えないので、この研修を通して、お互いを知り、「なぜ必要なのか」を理解し合うことで、本当に連携が取れた組織が作れていくのが理想ではないかと感じました。
おわりに
今回は2講演をピックアップしましたが、興味を引くものが多く、講演時間が被っていて泣く泣くいずれかに絞ったものや、申し込み定員オーバーで断念したものも多く、心残りも…。
次回の開催も楽しみにしています!
※本記事は2023年12月時点の内容です。