2026/06/01

テクノロジー

Claude Codeで仕様設計は爆速になったけど、結局、調整に時間がかかる問題をどうするのか

この記事の目次

    Claude Codeで仕様書を書くようになって、初稿の作成時間は劇的に短くなりました。

    しかしながら、運用してみると、リリースまでのリードタイム全体はほとんど変わっていないことに気づきました。

    今回は、「初稿は速くなったのにリードタイムが減らない」現象がなぜ起きるのか、自分の現場での観察をもとに整理してみます。

    体感は爆速、でも実は遅い

    正直、具体値を測っているわけではないんですが、

    「仕様作成までは、爆速でおわる、仕様調整に時間がかかる」

    といった実感があります。

    ↓イメージ


    「AIで爆速になった!」という体感はあるんですが、それは初稿フェーズの話だけだったんですよね。

    AIの品質はこれからも上がっていくと思いますが、それは初稿フェーズをさらに効率化するだけ。合意形成フェーズに手を入れない限りリードタイム全体は変わりません。むしろ初稿が速くなるほど、合意形成の比重がボトルネックとして目立ってきます。

    原因は2つあった

    リードタイムが減らない理由は、2つに整理できました。

    ① 意思決定が二重に走るフロー構造

    レビューの意思決定が二重化されていて、両方の合意を取らないと前に進めない、というやつです。

    (大き目の企業あるあるですね)

    多くの組織で同じはずで、純粋なエンジニアリングの速さでは削れない領域なので、今回は深追いしません。

    できる限り、フィードバックから修正のループを回すことを主題として話します

    ② レビューフォーマットの不一致 ← 今回の本題のため大切

    これが地味だけど致命的でした。

    • AIが書くフォーマット = Markdow(git差分が取れて、Claude Codeが直接編集できる、AI親和的)
    • 既存の意思決定フォーマット = Excel(AIが直接触れない、非AI親和的)

    このフォーマットの違いが、二重構造をボトルネックに変えてしまっていました。

    「最初のレビューはMarkdownで完結できるはず」なのに...

    初期レビューだけならMarkdownで完結できるはず、それなのに、なぜか毎回Excelに変換している運用が多い。

    なぜか。答えはシンプルで、下流のレビューフォーマットがExcelで固定されているからです。どうせ最終的にExcel化するなら最初から変換しよう、という運用が定着してしまっているんじゃないかと思います...

    つまり、エクセルに変換することが前提になっていること自体が、上流のAI親和性まで殺している構造でした。下流のフォーマットが、上流のワークフロー全体を規定してしまっています。

    問題は、ワークフローの設計 そのものにあります。

    症状:Excel への片方向変換問題

    このフォーマット不一致が具体的に何を引き起こすか。
    「片方向変換問題のつらみ」とこの記事の中では定義しましょうか。

    ↓ Markdown → Excel 片方向変換問題のつらみ 

    流れはこんな感じです。

    1. Claude Codeで仕様書をMarkdownで書く
    2. 下流に渡すために、Excelに変換する
    3. Excel上で内部レビューも下流レビューも全部やる
    4. Excel上で手書きで修正する
    5. 気がつくと、Excelが事実上の最新版になっている

    問題は、Excel上の手動修正をMarkdownに戻す方法がない(あるいは超面倒)ということ。セルに書き込まれたメモを、関連セルとの整合性を取りながら構造化されたMarkdownに反映するなんて、やってられません...

    結果として、改修ループからAIが外れます。せっかくClaude Codeで書いたmdは古いまま放置されて、次の改修サイクルも結局Excel上で手動でやることに。

    つまり、AIで初稿を作るメリットが 「初稿の1回しか効かない」構造になってしまっていたんですね。これがリードタイムを減らせない本当の理由でした。

    ↓ 合意形成の時間は変わってない,,,

    理想のループを定義してみる

    じゃあどうあるべきか。理想のループを定義してみます。

    ↓ AIもレビュアーも1つループに納めたい

    4ステップで完結する形です。

    1. AIで生成・修正する:Claude CodeでMarkdownのまま書く
    2. レビュアーにシームレスに共有する:Excelに変換せず、Markdownのまま読める形で
    3. レビュアーがコメントを返す:理想は直接編集も可能
    4. AIがコメントを取り込んで反映する:Markdownの上で完結する

    そして1に戻る、というループです。

    ここで決定的に大事なのは、正本はずっとMarkdown(git)であり続けるということ。図のとおり、一度もExcelに転記しません。

    この前提が崩れた瞬間に、さっきの「片方向変換問題」に戻ってしまいます。Markdownを正本として保ち続けることが、AI改修ループを生かすための必要条件です。

    「これって理想論じゃないですか?」と思う方もいるかもしれませんが、実装手段はこのあと詳細を詰めていきます。

    ループを実現する3つの優先度

    理想のループを実現するための要件を、3つの優先度に分解してみました。

    優先度1:Markdownに寄せる

    これは譲れない最初の制約です。

    Claude Code(AIエージェント)が直接触れる形式じゃないと、改修ループにAIを組み込めない
    逆にこれさえ満たせれば、ツールは後から選び直せます。

    これを諦めると「初稿だけAI、残り全部手動」の現状から抜け出せないので、これが一番重要です。

    優先度2:レビュアーにシームレスに共有 + コメントしてもらう

    これを満たさないと、共有のたびにExcel化が発生してしまいます。

    機能要件はざっくり3つ。

    • MarkdownとMermaid図がきれいに表示できる
    • ページ単位 or ブロック単位でコメントできる
    • 理想的にはインラインコメント(行単位の指摘)も可能

    ここが本記事の本丸です。

    実現方法としては、

    • 表示だけなら、静的サイトジェネレータでいけますね。Docusaurusを使えば見た目も整います。
    • コメント機能は、BackLogのAPIやMCPで自動で転記して、そこでフィードバックしてもらうことがいいでしょうか。

    ※社内のセキュリティー上、IPを制限した上で、社内公開する必要や特定のSassに頼らないといけないこともあるはず

    優先度3:レビュアー側が直接編集できる

    これが一番難しい優先度です。コメントを返してもらうだけでなく、軽い文言修正はレビュアー側で直接やってもらいたい、というケース。

    満たそうとすると、双方向 git sync (自動同期) ができる仕組みが必要になります。Web UIで編集 → 自動でgitに反映、という流れ。

    具体的にはGitBook級の有料ドキュメント管理ツールが該当します。企業単位で導入すると、月額数百ドル規模の大きさにはなってしまいますが...( https://www.gitbook.com/ )

    全部満たさなくていい

    ここで大事なのは、3つを全部満たさなくていいということ。

    • 1(マークダウン正本)だけで十分 → 今のGitHubで終わる(無料)
    • 2(共有とコメント)まで必要 → 静的サイト + BackLog等に手動アップロード(低コスト)
    • 3(双方向修正と同期)まで必要 → 有料の専用ツール(要投資)

    組織の現状と必要度に応じて、どこまで満たすかを決めればOKです。すべての組織が3を目指す必要はないと思っています。

    問題解決のための個人的結論

    2までを綺麗に再現するとなっても、
    GitHubのシームレスな連携 + コメント機能 + アクセス制限 の機能を持ったサービスはなさそうでした…

    唯一対応できる、gitbookはめちゃくちゃ高いです…
    (小規模のチームでも、全員に権限を付与するとなると、年に数十万はかかりそうでした...)

    それなら実装してしまえばよいのではないか、といった気持ちにはなっています。
    以前であれば、これだけでお金をとれるようなサービスだったかと思いますが、このくらいの要件ならギリギリ内製できそうですかね 

    ↓cluadeにデザインしてみてもらいました

    まとめ

    今回伝えたかったこととしては、2点です。

    ① ツールが現在のAIを組み込んだフローに対応できているのかを考える

    現状、意思決定フローにおいて、AIの良さがなくなっている可能性があります。
    あらためて、現在のプロジェクトの意思決定構造や、設計フローを見直す必要があると考えています。

    また、理想を定義した上で、社内で使えるならどの課題まで改善するか、ということをあらためて考えてみると面白いかもしれません。

    ② 最も守るべきは「正本がMarkdownであり続けること」

    これさえ守れれば、ツールはいつでも乗り換えられます。逆にこれを諦めると、AI改修ループが切れて、初稿の速さしか享受できない世界線に戻ります。

    そしてMarkdown正本化は、レビュアー側にとっても「最新版がどれか分からない」「Excelに散らばったコメントを追えない」みたいな問題が消えるので、関係者全員にとってメリットのある話だと思っています。

    AI時代のドキュメント問題は、ツール選定の話ではなく、正本のフォーマットをどう守るか、今の組織の中で、開発フローをどう設計するかを根本的に考えなすことが大切だと思いました。

    ※本記事は2026年06月時点の情報です。