社内アンケートから分析する、現場でのコード生成AIツールの活用実態 - 2025年
この記事の目次
はじめに
2025年はAIエージェントによるコーディングがかなり浸透した1年だったのではないでしょうか。Claude Code、GitHub Copilot、Cursor をはじめとするAIエージェントによるコード生成ツールが普及する中、現場のエンジニアは実際にどのような効果を実感し、どのような課題に直面しているのでしょうか。
本レポートでは、2025年12月末に社内のエンジニア・マネージャー約100名を対象に実施したアンケート調査の結果をもとに、満足度・生産性・コード品質・スキル向上の4つの観点からAIツールの活用実態を分析します。
主な発見
| 観点 | 結果 |
|---|---|
| 満足度 | 約9割が満足、NPS +32と高い推奨意向 |
| 生産性 | 約65%が1日1時間以上を節約、バグ対応・コード理解で特に効果を実感 |
| コード品質 | 「やや高い」が最多だが、約9割が何らかの修正を実施 |
| スキル | 新技術習得は加速する一方、「自力で書く力」への懸念も約4割 |
経験年数による傾向
- 若手〜中堅層(1〜5年):満足度・生産性向上の実感が高い一方、スキル低下への懸念も強い
- ベテラン層(10年以上):慎重な評価だが、確立されたスキルの上でAIを活用
以下、各セクションで詳細を見ていきます。
回答者の基本情報
社内エンジニア・マネージャー約100名から回答を得ました。
| 項目 | 概要 |
|---|---|
| 職種 | バックエンド・フロントエンド中心、インフラ・マネジメント・モバイルも多数 |
| 経験年数 | 1〜10年がボリュームゾーン(詳細は下図) |
| 使用言語 | TypeScript/JavaScript最多、Ruby・PHP・Pythonが続く |
| 利用ツール | GitHub Copilot と Q Developer/Kiro で約8割 |
| 利用頻度 | 約7割が「ほぼ毎日」、週3〜4日含め9割超が日常的に活用 |
経験年数

使用言語

利用頻度

AIツールへの満足度
AIツールに対する満足度を「全体満足度」「期待との比較」「同僚への推奨度(NPS)」の3軸で調査しました。結果として、全体的に高い満足度が確認されましたが、一部に注意すべき声も見られました。
約9割が「満足」と回答

全体満足度では、合計約90%が満足と回答しました。「非常に不満」はゼロであり、AIツールが日常業務に定着していることを裏付けています。
期待を上回る効果を実感

導入前の期待と比較して、約65%が期待以上の効果を実感しています。「期待通り」を含めると96%以上がポジティブな評価であり、導入判断が正しかったと言えます。
NPS +32:高い推奨意向

同僚への推奨度を問うNPS調査では、平均スコアが約8.0、NPSは+32となりました。これは「良好」とされる水準であり、多くのエンジニアが同僚にも利用を勧めたいと考えています。
推奨の声と懸念の声
推奨する理由(抜粋)
- 壁打ち相手として最適
- AIツールがなかった時代にはもう戻れない
懸念・注意点(抜粋)
- 使い方を誤ると逆効果。リテラシーが必要
- 自分で考える時間が減り、成長が滞る可能性
- PRが増えてレビュー負荷が高まっている
これらの声から、AIツールは「使いこなせば強力な武器」である一方、組織としての運用ガイドラインや教育が求められていることが読み取れます。
経験年数による回答の傾向
| 経験年数 | 平均スコア | 推奨者(9-10) | 中立者(7-8) | 批判者(0-6) |
|---|---|---|---|---|
| 1年未満 | 8.4 | 50% | 43% | 7% |
| 1〜3年 | 8.2 | 50% | 35% | 15% |
| 3〜5年 | 8.3 | 45% | 45% | 10% |
| 5〜10年 | 8.0 | 42% | 46% | 12% |
| 10年以上 | 6.9 | 22% | 45% | 33% |
経験年数別に観察しますと、若手〜中堅層(1〜5年)は特に高い満足度を示していました。「非常に満足」の割合は38〜43%、NPS平均も8.0〜8.4と高水準でした。学習効率の向上や開発スピードの改善を実感している声が多く見られました。
ベテラン層(10年以上)はやや慎重な評価となりました。「非常に満足」は22%にとどまり、NPS平均も6.9と他層より低い結果です。自由記述では「AIの出力を見抜く力が必要」「本人ができないことをAIで補う使い方には懐疑的」といった声があり、AIツールの限界を理解した上での活用を重視していることがうかがえます。
生産性への影響
AIツールの導入により、エンジニアの日常業務はどのように変化したのでしょうか。時間節約効果、業務品質の変化、そして残された課題について詳しく見ていきます。
1日1〜2時間の節約が最多、「2時間以上」も4人に1人

「AIツールにより1日あたりどの程度の時間を節約できているか」を尋ねたところ、最も多かったのは「1〜2時間」で約38%でした。さらに「2時間以上」と回答した人も約24%に達し、AIツールが単なる補助ではなく、業務時間を大幅に短縮する「生産性を向上させるツール」として機能しています。
ただし「ほとんど節約できていない」という回答も存在し、ツールの活用度合いや業務内容によって効果に差があることも示唆されています。
5つの業務指標すべてで改善傾向

導入前後の変化を5段階評価で調査した結果、すべての項目で「向上」「やや向上」が過半数を占めました。
ただし「集中状態(フロー)への入りやすさ」は改善効果が限定的で、「向上」は約45%にとどまり、「やや悪化」も約12%存在します。AIとの対話や提案の確認作業が集中を中断させること、また生成待ち時間に別作業を行うようになったことが要因と考えられます。
課題の中心は「AIの限界」と「検証コスト」

AIツール利用時に感じる課題を複数選択で尋ねたところ、上位3つは以下の通りでした。
- コンテキストの理解が不十分(約45%)
- AIの出力を検証する負担が大きい(約40%)
- セキュリティ面での不安(約38%)
これらの課題は相互に関連しています。AIがプロジェクト固有の文脈を十分に理解できないと、ロジックの誤りや不適切なコードが生成されやすくなります。その結果、開発者はAI出力の検証に多くの時間を割く必要があり、見落としによるセキュリティリスクへの不安にもつながっていると考えられます。
AIが最も力を発揮するのは「バグ対応」と「コード理解」

「生産性向上に最も貢献している作業」を上位3つまで選択してもらった結果、問題解決(バグ対応)や理解支援といった「思考を補助する」用途で高く評価されています。エンジニアがAIを「コードを書かせる道具」ではなく、「一緒に考えるパートナー」として活用し始めていることを示しています。
コード品質への影響
生産性の向上が確認された一方で、「品質は犠牲になっていないか?」という懸念もあります。本セクションでは、AIツールが生成するコードの品質評価と、導入後の品質指標の変化を詳しく見ていきます。
品質評価は「やや高い」が最多——ただし検証は必須

AIが生成するコードの品質について、「やや高い」が約50%で最多となりました。一方で「普通」も約40%を占め、「非常に高い」はわずか約3%にとどまっています。

この評価を裏付けるように、出力の検証・修正状況では約9割が何らかの修正を加えていると回答。「ほぼそのまま使用」はわずか2%でした。
注目すべきは、「大幅な修正が必要」がゼロだった点です。AIの出力は「使い物にならない」レベルではなく、「手直しすれば十分使える」品質といえます。エンジニアはAIを「完璧なコードを生成する」ものではなく、「たたき台を素早く作るツール」として活用しているようです。
経験年数による傾向:若手ほど「改善」を実感
経験年数別に品質評価を分析すると、若手〜中堅層(1〜5年)は「やや高い」の割合が高く、AIツールの品質に対して好意的な評価を示しています。一方、ベテラン層(10年以上)は「普通」「やや低い」の割合が相対的に高く、より厳しい目で品質を評価していることがうかがえます。
これは満足度セクションで確認された傾向と一致しており、ベテラン層が「AIの出力を見抜く力が必要」と考えていることの表れと考えております。
学習・スキルへの影響
AIツールの活用は、エンジニアのスキル向上にどのような影響を与えているのでしょうか。本セクションでは、スキルへの影響、依存への懸念、そして今後の利用意向について詳しく見ていきます。
新技術の習得速度が最も向上、一方で「自力で書く力」には懸念

スキル向上への影響を4つの観点から調査した結果、項目によって明暗が分かれる結果となりました。AIツールが「学習のハードルを下げる」役割を果たす一方で、頼りすぎによる基礎力低下のリスクが懸念されています。
自由記述では以下のような声が見られました。
学習効率向上を実感する声:
- 他チームメンバーに聞かなくても、壁打ち相手になってくれるので、自身の理解向上やチームの生産性向上に大きく貢献しているため
スキル低下への懸念を示す声:
- 仕事自体は進むが、成長の側面で考えると良くないと感じる部分も多いため
- スピードや品質は向上するが、深く理解しないままAIで一定のコードや正解らしき情報が出力されるため、自分で深く考えたり調査したりする時間が減り、技術的な成長が滞るため
約4割が依存に「懸念あり」——ただし意見は二分

AIツールへの依存について尋ねたところ、約45%が何らかの懸念を示しました。一方で、「あまり懸念なし」「全く懸念なし」も約39%と拮抗しており、エンジニアの間で意見が分かれています。
自由記述では、懸念の有無にかかわらず「使い方次第」という認識が共通して見られました。
- 利用できるのであれば、使わない理由はないと思っている。ただし、エンジニアとしての今後の成長を考えるのであれば、利用範囲、パターンは考えた方が良いとは思っている
また、経験年数による活用の違いを指摘する声もありました。
- エンジニア歴が非常に浅い人には鵜呑みにしてほしくないと思っています。理由は書いたコードの説明ができない程、自分の頭を使わないようになってコードに責任を持てない可能性がある為です。歴が長い人であれば生成されたコードが期待通りなのかそうではないのか判断がつくのでお勧めできます
- 一見万能に見えるが、正しい使い方を知らなければかえって効率が悪くなる。また、手作業の方が早いタスクもある。ただ使うだけで他メンバーに迷惑をかけるような人材には勧めない。リスクやデメリットもしっかりあるものだと理解している人だけに勧めたい
経験年数による傾向:若手ほど「自力で書く力」への悪影響を実感
| 経験年数 | 自力で書く力に「悪影響」「やや悪影響」と回答した割合 |
|---|---|
| 1年未満 | 約40% |
| 1〜3年 | 約50% |
| 3〜5年 | 約55% |
| 5〜10年 | 約40% |
| 10年以上 | 約35% |
興味深いのは、1〜5年目の若手〜中堅層で「自力で書く力への悪影響」を感じる割合が高い点です。基礎スキルを習得・定着させる時期にAIツールに頼りすぎることへの自覚があると考えられます。
一方、ベテラン層(10年以上)は「悪影響」の割合が相対的に低く、すでに確立されたスキルの上にAIを活用しているため、悪影響を感じにくい傾向がうかがえます。
継続利用意向は97%——「なくてはならないツール」へ

今後の継続利用意向を尋ねたところ、約97%が継続利用を希望しています。スキルへの懸念がありながらも継続利用を希望する声が圧倒的多数であることから、AIツールは「課題を認識しつつも手放せない存在」になっていることがわかります。
組織への要望:「ガイドライン整備」が最優先
AIツールの活用促進のために組織に取り組んでほしいことを尋ねた結果、上位は以下の通りでした。
| 順位 | 取り組み内容 | 選択率 |
|---|---|---|
| 1位 | 利用ガイドライン/ベストプラクティスの整備 | 約55% |
| 2位 | セキュリティポリシーの明確化 | 約40% |
| 3位 | 効果的な活用事例の共有 | 約38% |
| 4位 | 社内勉強会・ナレッジ共有の機会 | 約32% |
| 5位 | ライセンスの追加付与 | 約30% |
| 6位 | 新しいツールの試験導入 | 約28% |
「利用ガイドライン/ベストプラクティスの整備」が過半数を超え、最も強く求められていることがわかります。これは生産性セクションで確認された「社内ルール/ガイドラインとの整合性」への課題意識と一致しています。
自由記述でも、組織としての取り組みを求める声が見られました。
- 間違いなくAIを使った方がいいが、各個人単位ではなくPJや組織としてのAIを活用する前提での開発フローの共有が欲しい
今後に向けて
AIツールの効果を最大化し、リスクを最小化するためには、以下の取り組みが求められます。
重点施策
1. 利用ガイドラインの整備
サイボウズ株式会社の新人研修資料では、「裏取りは必ず行うこと」と明記し、AI出力を盲信しない姿勢を研修段階からエンジニアに伝えています。
弊社でも、セキュリティポリシーの明確化に加え、AI出力の検証プロセスをガイドラインとして整備していきます。
2. ナレッジ共有の促進
READYFOR株式会社のアンケートでは、組織に求めるサポートとして「チーム内での経験・課題共有の場」が67%と高い割合となっています。弊社のアンケートでも同様の声が見られました。
また、株式会社エブリーでは、AIツールを用いた開発効率化の勉強会を開催し、知見を共有しています。
弊社でも、効果的な活用事例や失敗事例を共有する場を定期的に設けていければと考えております。
3. スキル育成との両立
本アンケートでは、1〜5年目の若手〜中堅層で「自力で書く力への悪影響」を感じる割合が高い結果となりました。この課題に対し、他社では以下のようなアプローチを取っています。
- フリー株式会社: 新卒研修を「前半6週間はAI禁止」「後半5週間はAI全力活用」の2段階構成とし、基礎スキル習得とAI活用のバランスを設計
- クラウドエース株式会社: AIの出力に対する「なぜこの実装なのか」を問う習慣化を徹底し、AIの言いなりにならない開発者を育成
弊社でも、特に若手層に対する基礎力強化の機会を確保しつつ、AI活用スキルを高める両輪のアプローチを検討していきます。
継続的な改善に向けて
定量的な効果測定
今後はアンケート結果だけでなく、ツールの使い方を定量的にメトリクスをもとに分析していきます。フリー株式会社のAI駆動開発2025レポートでは、トークン消費量やリクエスト数などの定量データを継続的に測定しています。
組織的な推進体制
組織戦略としては、合同会社DMM.comのAX戦略やフリー株式会社の組織設計も参考に、組織全体での利活用を促進する仕組みを整えていきます。
おわりに
AIは「完璧なコードを書く」ツールではなく、「たたき台を素早く作り、一緒に考えるパートナー」です。この認識のもと、組織として適切な活用体制を整えていきます。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
※本記事は2026年02月時点の情報です。