「これ、俺たちでもできるんじゃね?」から始まったフィジカルAI部(仮)の記録
この記事の目次
そもそもフィジカルAIとは?
活動の話に入る前に、フィジカルAIについて少しだけ。
ざっくり言うと、カメラやセンサーで現実世界の情報を取り込み、AIの判断をロボットなどの動きにつなげる技術です。
画面の中で答えを出すだけでなく、現実世界のものを動かすところまでが対象になります。
内閣府のムーンショット目標には自律的に行動するAIロボットの開発が掲げられています。
2030年までに、あらゆる状況に対応できる汎用自律人型AIロボットの実現に向けた開発要素の基礎を確立する。
ムーンショット目標3 2050年までに、AIとロボットの共進化により、自ら学習・行動し人と共生するロボットを実現- 科学技術・イノベーション - 内閣府
総務省の資料にも、2030年代の未来像として、朝の支度を手伝うロボットが登場します。
2030年代に実現したい未来の姿と 実現に向けた工程イメージ
なかなか夢のある分野です。
では、その夢に挑んだ私たちの話を始めます。
第一章:フィジカルAI、新たなる希望
きっかけは、2025年12月に社内で共有されたフィジカルAIの話題でした。
その後、ロボットアームを使った技術記事が共有され、「これなら自分たちでも試せるのでは?」と話が進みます。

今回使ったのは、オープンソースのロボットアームSO-101。
公開されている設計情報と、Hugging Faceのロボティクス向けライブラリ「LeRobot」を使って、組み立てからデータ収集、学習まで試せます。
SO-101の公開情報
LeRobotのGitHubリポジトリ
とはいえ、「ロボットアームを買って試す」と言うほど気軽な買い物でもありません。
そんなときAI戦略室の室長からありがたいことに機材購入の後押しもあり、挑戦できることになりました。
そんなこんなで、フィジカルAI部(仮)、結成!
第二章:フィジカルAI部と予期せぬ試練
注文した部品は、海外発送にもかかわらず無事に到着しました。
モーターもある。基板類もある。よし、組み立てるぞ!
と思ったところで気づきます。
ボディがない。
私たちが用意した構成では、アームの外装パーツを別途調達する必要がありました。
SO-101には3Dプリント用のデータも公開されていますが、私たちの手元に3Dプリンタはありません。
どうしたものかと思っていたところ、3Dプリント済みのパーツを入手できることが分かり、フィジカルAI部部長が買い出しに行ってくれました。
これでようやく、組み立て開始です。

届いたもの

買い足したもの
精密ドライバーなどを持ち寄り、真面目に作業を進めます。
ただ、モーターの設定や配線を十分に確認する前に組み立て始めてしまったため、途中から様子がおかしくなります。
ネジが入らない。配線が通らない。「これ、物理的に無理じゃね?」という場面もある。
フィジカルAIを組み立てるために、まず人間のフィジカルが必要でした。なんとも皮肉です。

それでも最終的には、2本のアームが形になりました。

組み立て中の発言まとめ

使用サイト:発言まとめメーカー
第三章:こいつ……動くぞ!
組み上がった2本のアームは、人が操作する側と、その動きを再現する側として使います。動かす前には、各アームのモーターの位置を合わせるキャリブレーションが必要です。
設定を済ませ、いよいよ動作確認。
とんでもないものができちゃいました。
キャリブレーションをミスっていたようです。もう一度調整して、再挑戦します。
そして、ついに。
動いた!ようやく動いた!
ちなみに、この時点で4月中旬です。まだAIの学習は始まっていません。
第四章:AIは学習の夢を見るか?
2本のアームが動くようになったので、ここから学習データを集めます。正直、これまでの作業は準備フェーズでした。
今回やってみるのは、ものをつかんで、黒い箱に入れる動作です。人がアームを操作し、そのときの動きとカメラ映像を記録します。

この一連の動作を、ここでは「1エピソード」と呼びます。参考にしていた情報では、もっと多くのエピソードを集めることが勧められていました。
それを踏まえて、私たちが最初に集めたのは、
10エピソード。
少ないのは分かっています。ただ、月に1〜2回の活動で同じ動作を繰り返し記録するのは、思っていた以上に大変でした。まずは動くところまで試してみよう、という判断です。

学習中の画面
いざ、初推論!
学習したモデルでアームを動かしてみます。
……屈伸運動?
少なくとも、狙っていた「ものをつかんで箱に入れる」動きではありません。
その後も調整して、もう一度。
すごい惜しい!!!!!
目指す動きに近づいてはいるものの、成功とは言い切れない。ここまで来たら、もう少し試したくなります。
第五章:フィジカルAI部/エンドゲーム
初めての学習と推論を経て、私たちは思いました。
カメラを増やしたらいいのでは?
「先にエピソードを増やせよ」と思った方。おっしゃる通りです。
それはそれとして、正面からの映像に加えて、横からの映像も使えるようにしました。


そして、もう一度学習して推論します。
ペンを掴んだあああ!!!
今回の環境では、学習した動作をもとに、ペンをつかんで箱を置く位置まで運ぶことができました。
ただし、この動画では箱を置いていないため、「箱に入れる」までを確認したわけではありません。
もちろん、これでどんなものでも安定してつかめるようになったわけではありません。
それでも、最初の屈伸運動を見たときから考えると、大きな前進です。
成功して、めちゃくちゃ安心しました。
エピローグ:俺たちの戦いはこれからだ
突然始まったフィジカルAI部(仮)でしたが、3人で組み立て、データを集め、学習と推論までたどり着けました。
ときにはほかのメンバーにも協力してもらいながら、なんとか成功パターンを見ることができました。
月に1〜2回の活動で、予定が合わない時期もありました。振り返ると、よくここまで進んだなと思います。
今回やってみて面白かったのは、モデルの学習だけでは終わらないことです。
部品を揃えるところから、配線、キャリブレーション、カメラの位置、データ収集まで、全部が結果につながっていました。
画面の中だけで試すAIとは、また違った難しさがあります。
フィジカルAI部(仮)の今後は、まだ決まっていません。
ただ、この分野は引き続き追っていきたいと思っています!
SO-101は、公開されている情報を頼りに自分たちで組み立て、動かしてみられるロボットアームです。
興味のある方は、ぜひ触ってみてください。
そして、うまくいかなかった話も聞かせてください。たぶん盛り上がります。
放課後
本筋からは少し外れますが、活動中には「次はどんなロボットを触ってみたいか」という話もしていました。
まだ今回のアームと格闘しているのに、気が早い。
候補の一つとして話題に上がったのがOpenArmです。
もちろん、次に取り組むことが決まったわけではありません。
こういう話をしている時間も、部活動らしくて楽しかったです。
THE PHYSICAL AI CLUB WILL
RETURN.
...MAYBE.
※本記事は2026年11月時点の情報です。